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余暇政策論

松田 恵子

 

 

スポーツ・マーケティング・ビジネスについて

70年代の地球規模でのテレビの普及とスポーツテレビ中継の隆盛に伴い、スポーツイベントは世界規模でのビジネスの媒体として注目されるようになる。その主な商品としてイベントのテレビ放映権、イベントの名で販売活動を行う際のスポンサー・ライセンシー、競技場に広告を出す事が出来る広告スポンサー・ライセンシー、記念グッズの販売ライセンシー等が挙げられる。これらの収益は、当然ながらイベントの主催団体が得るものであるがしかし、主催団体は、巨大トーナメント開催の中で収益をあげるノウハウを持っている訳ではない。そこで彼らは代理人を雇い、イベントを世界市場に売り出すビジネスを任せる。サッカーワールドカップについて言えば、主催団体はFIFA(国際サッカー連盟)であり、FIFAの代理人として長い間そのビジネスを取り仕切っていたのがISLInternational Sports Culture and Leisure Marketing A.G.)であった。

ISLは1982年にスポーツ・マーケティングをその業務として、adidas社と電通の合併でスイスに設立された会社である。彼らはスポーツイベントをテレビ放映権収入とスポンサー収入で黒字化、イベントの運営自体をビジネス化させた。またワールドカップだけでなく世界陸上やプロテニスの選手権の運営も手がけ、その都度大きな利益を出していった。

彼らの上げる成果は、イベントの収益が全ての資金収入源である主催団体にとって、大規模なイベント開催を続けていく上で不可欠なものであった。アマチュアリズムを尊ぶ日本ではスポーツをビジネスにするというのは受け入れがたく感じられがちであるが、スポーツイベントがその華やかさと宣伝効果により世界的に魅力のあるエンターテイメントとなりえた背景にISLのようなスポーツ・マーケティング会社の存在があった事は無視できない。

 しかし、そのISLの躍進にも陰りが見え始める。2001年3月31日、ISL社の債務超過が発覚し、経営が破綻したというニュースが人々の耳に入ってきた。82年以後、FIFAワールドカップの運営を任されてきたISLがついに消滅したのである。この破綻確定によって、いくつかの問題が生じた。先ずは先立つ2002年大会への影響である。FIFAはこの問題に対して、ISLの所有していたテレビ放映権をドイツのキルヒ(Kirch)メディアに、マーケティング権はFIFAの子会社であるFIFA Marketing AGに移す事で一応の解決をみた。しかし、これで全てが上手くいくというわけではない。契約主が代わったことで、放映権の契約やスポンサー料といった面で、契約者相互の様々な行き違いが生じた。現在話題に上っているチケットの配布問題も、この影響を少なからず受けていると考えられる。

 

ISL破綻とは、一体何だったのか

http://www.sportsnavi.com/topics/Article/ZZZ0X2GKKSC.html (スポーツナビ)

 

スポーツのためのマーケティング、金儲けに走りすぎたISL

http://www2.asahi.com/2002wcup/news/010522a.html (朝日新聞社 Asahi Worldcup 2002

 

ISL破綻のニュース

http://www2.asahi.com/2002wcup/news/010522c.html

http://www2.asahi.com/2002wcup/news/010518c.html

http://www2.asahi.com/2002wcup/news/010526a.html

 

次回からはISLのスポーツビジネスの内容・具体的な事象を掘り下げていきたい。

放映権―スカパーとJC、韓国の放映権、英メディアの訴訟

マーケティング―JAOCとの関わり